Symptoms of the nose
鼻水がのどにおりてくることを後鼻漏(こうびろう)と言います。
誰でも一日にある程度の量の鼻水が生産され、のどにもおりてくるのですが、鼻水がサラサラの時は後鼻漏があまり気になりません。鼻水の分泌量が増えた時や、鼻閉・口呼吸になっている時、鼻水が粘液性や膿性になった時には、鼻とのどの間(上咽頭)に引っかかった感じが気になってきます。
後鼻漏が気になる場合、副鼻腔炎、上咽頭炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、急性鼻炎の後期、慢性鼻炎の可能性があります。
慢性的に粘液性や膿性の後鼻漏がある方では、副鼻腔炎、上咽頭炎、慢性鼻炎の可能性が考えられます(これら3つは同時に合併することもあります)。
後鼻漏が原因で咽頭痛や咽頭違和感が起こることもあります。また後鼻漏の粘り気が強いと、これがのどに下りて痰のようにからむ場合がよくあります。加齢などによる嚥下機能の低下も加わると、痰(後鼻漏)が嚥下できずに咽頭に残り、咽頭違和感が強くなることがあります。
ところで、鼻とのどの間に引っかかった感じがある方の中でも、実際に視診や内視鏡(ファイバーカメラ)で後鼻漏を認めないことがあります。この場合を「後鼻漏感」と呼びます。後鼻漏感は、鼻の奥に鼻茸(ポリープ)がある場合や、逆流性食道炎により胃酸が上咽頭まで上がってきた場合などに起こることがあります。
また鼻閉・口呼吸を起こす疾患(アレルギー性鼻炎など)で、「口呼吸のため上咽頭が乾燥→その結果、上咽頭の知覚が過敏になった場合」や、鼻閉のために鼻水が(前に出ずに)鼻の奥にとどまる場合にも後鼻漏感は起こり得ます。
加齢により鼻や上咽頭が乾燥しやすくなることが知られており、歳を重ねて後鼻漏感が起こる方もあります。また年齢にかかわらず、ストレスの多い状態では口呼吸が増える傾向にあり、自律神経バランスの悪化も加わってこれが後鼻漏感につながる場合があります。
後鼻漏や後鼻漏感がある方は、首や肩のこり、頭重感、体のだるさを伴うこともよくあります。
後鼻漏の治療として、一般的には薬物療法(抗生物質、消炎剤、粘液調整剤、抗アレルギー剤など)、ネブライザー(吸入)治療が行われています。当院では、上咽頭炎を認める場合にはBスポット療法も行っています。
日常生活に気をつけること(冷えや乾燥を防ぐ、十分な睡眠をとるなど)も、後鼻漏改善のために非常に重要です。
・粘液性や膿性の後鼻漏の原因としては、副鼻腔炎と上咽頭炎が多いです。
・サラサラした後鼻漏の原因としては、アレルギー性鼻炎が多いです。
・鼻とのどの間に引っかかった感じで受診した方で、実際には鼻からも口からも出てこず、視診や内視鏡(ファイバーカメラ)で後鼻漏を認めない場合は「後鼻漏感(←上のほうの説明文をご参照ください)」と呼び、これは年配の方に多い印象です。
当院では必要に応じて、①鼻からのファイバーカメラ検査、②CT検査、③鼻や咽頭の細菌検査、④アレルギー検査を行っています。鼻からのファイバーカメラ検査は痛みが少なく、1分程度の短時間で終わります。検査費用については「Bスポット療法のページ」をご参照ください。他院でアレルギー検査歴のある方は、結果が分かるものがあればご持参ください。
上咽頭炎は、上咽頭への塩化亜鉛塗布(Bスポット療法)を行うことにより診断します。上咽頭炎では、塩化亜鉛を塗布した時に上咽頭からの出血や痛み(ヒリヒリ感)があります。
当院では、後鼻漏については「日常生活に支障がない(本人が気にならない)状態」が続けば「治癒」と考えていますが、発症して間もない後鼻漏は、適切な治療と養生により多くの場合治癒します。慢性的な後鼻漏(とくに発症して1年以上経過)は、他の慢性疾患と同じように「治る場合もあるが、治らない場合もある」のが現状です。
副鼻腔炎は「薬物療法→無効なら内視鏡手術」という治療手順が一般的で、上咽頭炎はBスポット療法、鼻茸は手術、逆流性食道炎は主に薬物療法で治癒に向う可能性があります。アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎は体質が関係するため完治が難しい場合もありますが、主に抗原回避(原因物質をなるべく避けること)と薬物療法で後鼻漏が気にならない状態になる可能性があります。
治りにくい後鼻漏としては、①加齢に伴う後鼻漏感(鼻や上咽頭の乾燥による)、②多忙・睡眠不足・ストレスと関連した後鼻漏感、③慢性鼻炎による粘液性や膿性の後鼻漏があります。
①では、対症療法(保湿成分の点鼻薬使用、乾燥時のマスク着用など)が主体となり、完治までいかなくても日常生活の快適性を上げることが目標となります。
②では、何とか生活環境を変えることが必須ですが、現代は忙しい方が多いので・・治療は難航します。
③の慢性鼻炎の中で、視診やファイバーカメラで後鼻漏の発生部位が分からない(でも、粘液性や膿性の後鼻漏はある)場合、薬物療法(粘液調整剤、ステロイド点鼻薬など)、鼻洗浄治療が主体となりますが、決め手となる治療法がありません。
個人的には①、②、③についても、もし「治療前の調子が(100点満点で)50点→治療後の調子が70点」となるならば治療の意義があるのでは?と考えて診療を行っています。
後鼻漏の原因、発症から治療開始までの期間により異なります。発症から1ヶ月以内では、一度の治療だけで治癒することもあります。
慢性上咽頭炎と診断された場合の治療(Bスポット療法)は、通常週に1~2回ペースの治療を10~15回程度を目安に行っています。
慢性副鼻腔炎では、マクロライド系抗生物質の少量長期(約3ヶ月)投与が広く行われています。手術が望ましいと思われる場合は、患者さんと相談の上、手術可能な総合病院に紹介状を作成することもあります。
睡眠(コンスタントに6~8時間が理想)、体の冷え(とくに首の冷え)を防ぐ、乾燥を防ぐ(部屋の湿度は40%以上)、鼻呼吸を心がける(鼻呼吸しにくい時は耳鼻科で治療を行う)が重要です。アレルギー性鼻炎の場合は、その対処(抗原回避)も必要となります。塩素濃度の高いプールで泳ぐと後鼻漏が悪化する方もあり、悪化の程度によってはプールを休むことも考える必要があります。
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