Allergic rhinitis, Pollen allergy
アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、鼻漏(=鼻水)、鼻閉(=鼻づまり)などの症状がアレルギー反応によって引き起こされる病気です。アレルギー反応の原因となるものを抗原と呼びます。アレルギー性鼻炎の中で、花粉が抗原となるものを花粉症といいます。
ダニは6月~7月に増殖し、8~9月に死ダニが増え、この死ダニがアレルギーの原因となります。また冬は、暖房で暖かい室内でダニが増殖することがあります。
秋~冬にアレルギー症状が発生する場合、ダニアレルギーの可能性も考えられます。
アレルギー性鼻炎による鼻漏は、基本的にサラサラして透明です。鼻閉により嗅覚障害が生じることもあります。目のかゆみを伴うことが多く、これが風邪による急性鼻炎との違いとなります。その他に、耳のかゆみ、皮膚のかゆみ、のどのイガイガ感、咳、下痢を伴うこともあります。
治療の基本は、原因物質(抗原)をなるべく避けることです。ハウスダストやダニが原因になっている場合は、寝具を小まめに洗濯すること、ダニは熱に弱いので布団乾燥機で寝具を熱すること、できればカーペットをやめることが効果的です。
「アレルギー性鼻炎のようだが、何に対してのアレルギーなのか調べたことがまだ無い」という方は、一度アレルギー検査を受けることをお勧めします。抗原を避けるだけで、症状が大きく改善されることもあります。
病院で行うアレルギー性鼻炎の治療法には以下のようなものがあり、当院では現在1)、2)、3)を行っています。
1)薬物療法(内服薬、点鼻薬)
2)レーザー治療
3)体質改善治療(減感作療法、舌下免疫療法)
4)手術(後鼻神経手術)
薬物療法は、アレルギー性鼻炎の最も一般的な治療法です。花粉によるアレルギー性鼻炎(花粉症)などで症状の持続期間が短い場合は、市販薬でしのぐのも一つの方法です。しかし市販薬の効果が弱い場合、副作用(眠気、口の乾きなど)が気になる場合は、病院への受診をお勧めします。また、市販の点鼻薬の使いすぎは薬剤性鼻炎を起こすおそれがあり、注意が必要です。
内服薬や点鼻薬による治療は、アレルギー性鼻炎の症状を抑えるために効果的ですが、これらの治療はあくまでもアレルギー症状を抑えるものであって、アレルギー体質を根本的に治すものではありません。
当院では、内服薬、点鼻薬以外の治療法として、減感作療法を行っています。
当院ではアレルギー検査として、主に血液検査を行っています。
血液検査(RAST法)は、アレルギーの原因抗原を知るために有用な検査です。血液を採取し4~5日後に結果が判明します。測定可能な抗原は約200種類ありますが、保険では13種類までの検査が認められています。
検査結果は、それぞれの抗原に対する血液中IgE抗体の量で表されます(IgE抗体はアレルギーに関係する物質で、体内に抗原が入ってきた時に、その抗原と結合しアレルギー症状を引き起こします。一般的に体内のIgE抗体の量が多いほど、アレルギー症状が起こる率が高いとされています)。
検査費用は、7種類の抗原(例えば、スギ、ヒノキ、イネ科植物、キク科植物、ハウスダスト、ダニ、カビ)について調べた場合、約3,000円です(3割負担者の時)。 当院では、原則として5歳以上の患者さんに検査を行っています。5歳未満の子供さんのアレルギー検査は、かかりつけの小児科にご相談ください。
「アレルギー性鼻炎のような症状があり、鼻腔内の所見からもアレルギーが疑われるのに、アレルギー検査で異常なし」という方が一定の割合であります。この場合、血管運動性鼻炎(温度差(寒暖差)などによる鼻炎)、または局所アレルギー性鼻炎の可能性が考えられます。
局所性アレルギー性鼻炎は、近年その存在が報告されました。この病気は「鼻の粘膜内にだけIgE抗体が存在し、何らかの抗原(ハウスダスト、花粉など)によりアレルギー性鼻炎・花粉症と同じような鼻の症状が出るが、全身の血液中のIgE抗体は正常範囲」という特徴があります(IgE抗体が鼻の粘膜内だけにとどまっており、全身に回っていない状態と考えられます)。そのため血液検査を行っても「異常なし」との結果となります。
鼻の粘膜内のIgE抗体は今のところ測定困難なため、局所性アレルギー性鼻炎ははっきりとした診断が難しい病気です。診察・検査の結果、局所性アレルギー性鼻炎が疑われる方には、鼻炎症状の出現時期(季節性があるのか、一年中なのか、室内または屋外なのかなど)によって抗原を推測し、抗原を避けていただいているのが現状です。現在の技術的に、アレルギー検査ではっきりとした結果が出ない場合もあることをご了承ください。
鼻粘膜にレーザーを照射し、鼻閉、くしゃみ、鼻漏を改善させる治療法です。鼻閉に対しては比較的有効率が高いものの、くしゃみ、鼻漏には有効率が低いことと、何らかの効果が出た場合にも約半年~2、3年しか持続しないのが難点です。(詳しくは、「レーザー治療」のページをご覧ください)。
減感作療法は、抗原(スギ花粉)を薄めたエキスを皮下注射する治療法で、現在行われているアレルギー治療法の中では、根本治療に最も近いものです。鼻症状(くしゃみ、鼻漏、鼻閉)に対しての有効率は約70~80%です。治療に時間と手間がかかるのが難点です。最初はごく少量の注射から始めて、週1~2回のペースで注射を続けます。注射のたびに抗原の量を増やしていき、体を徐々に抗原に慣らしていきます。
当院では現在、花粉症・アレルギー性鼻炎の方に減感作療法(スギ花粉)を行っています(喘息や皮膚炎など、耳鼻科以外の症状は治療対象としておりませんので、ご了承ください)。
喘息症状の副作用については、起こるとしても多くは注射後15分以内に起きるため、当院では注射後15分間は院内にいていただき、万一の場合も迅速に対処できるようにしています。また減感作療法のみの方(受診当日、他の治療を必要としない方)は優先的にご案内しており、治療前の待ち時間はあまりかかりません。
当院では、スギ花粉の減感作療法を行っています。ヒノキ花粉症の方も、減感作療法の適応となります(スギ花粉エキスの注射が、ヒノキ花粉症の方にも効果があることが知られています)。
春の花粉症の方は、飛散シーズンの終わった5月~秋になるまでの間に治療を開始するのが良いでしょう(春の花粉飛散中は、治療を開始できません)。
治療は保険適応となり、費用は再診料、注射料含めて、1回の治療につき約500円程度です(3割負担者の場合)。
2014年から開始された舌下免疫療法(経口薬による体質改善)については「鳥居薬品の舌下免疫療法専門サイト」に詳しい説明があり、ご参照ください。当院では現在、シダキュア(スギ花粉用の薬)、ミティキュア(ダニ・ハウスダストアレルギー用の薬)を扱っています。
舌下免疫療法は、家庭で体質改善治療ができる(病院への通院は月1回)というメリットがあるものの、3~5年間の治療継続を要する、無効例もある、治療の長期成績はまだ分からない、シダキュアのヒノキ花粉への効果が十分確認されていない、という問題点があります。
副作用による死亡例は世界的に報告されていませんが、1億回服用に1回の確率で重大な副作用(アナフィラキシーショック)の可能性があると報告されています。そのため、朝~昼間(多くの病院が稼働している時間帯)に服用するように説明しています。
また、服用前後2時間程度は激しい運動、入浴が出来ないという制限があるため、体育の授業 + 放課後のスポーツがある学生の方では服用時間に気をつける必要があります。
「3~5年間、毎日薬の継続服用が必要です」「薬を継続服用しても効かないこともあります」という説明を聞いてどう受け取るかは、人により様々かと思いますが、他に有効なアレルギー性鼻炎の治療法がなく、3~5年間続ける意思がある方はご相談ください(服用開始してすぐ効果が出るものではないことをご理解ください。毎日の継続服用が難しい方は、安全にも関わることなので、当院の判断で処方を中止することもあります)。
薬物療法、レーザー治療、減感作療法によってもアレルギー性鼻炎が改善されない場合、後鼻神経手術という手術法もあります。広島県内では一部の総合病院で行っている手術で、全身麻酔で入院期間も1週間ほどかかりますが、適応かと思われる方は当院で総合病院への紹介状を作成いたします。
*舌下免疫療法について、もう少し詳しい説明は「アレルギーの体質改善治療(舌下免疫療法)のページ」に記載しております。ぜひご覧ください。
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